織匠

何千何万の結びが創る、
ペルシャ絨毯の耽美な模様。
三無主義の織匠は、
人生と意匠を同様に見つめる。


「まず始めは〈人生〉という広大な経糸を
〈誕生〉の緯糸と組み合わせ、
〈幸福〉の意匠を織り上げる。
結びは〈人生〉の経糸を
〈死〉の緯糸と組み合わせ、
〈快楽〉の意匠を織り上げる。
これを基本とする。


その中間においては基本的に、
〈成長〉、〈結婚〉、〈出産〉、〈労働〉の
緯糸で意匠をつくるが、
順番は問われない。


熟達した織匠は、撚糸を用いて、
より複雑で、多様な意匠を求める。
その意匠は精巧で、美しく、人々の関心を集める。
一方、わたしは、精巧な意匠を無益とみなす。
それは、審美感の満足を引き起こすに過ぎない。
精巧、単純に関わらず、
意匠は全体に美を加える。


[精妙さ]によって計られる意匠は、
織匠に〈苦痛〉をもたらす。
これは、[幸福]によって計られる人生が、
人間に〈苦痛〉をもたらすことに等しい」








×

非ログインユーザーとして返信する