二重心臓
生命の緒を貪り啖う野獣は
心臓を好物とした
およそ全ての人間に潜む
心を襲う怪物
三年前に狙われた我が心臓は
少しずつ蝕まれている
休むことを知らぬ野獣は盲目で
人の声すら届かない
意外な手紙は懐かしく
居心地の良い匂いがする
その手紙は種となり
新たな心臓を生やした
生命の緒を貪り啖う野獣は
我が前に姿を現す
獲物を掴む尖った鉤爪と
すり潰し味わう平らな歯
「人は複数の心臓を持っている
胸の痛みを感じた時に種は植わわり
充足が水となり種を育む
それを求めて我現る」
生命の緒を貪り啖う野獣は
二つ目の我が心臓を掴み貪る
我が中に共生する
二頭の野獣と二つの心臓