名前も知らない山


朝のこと。

外に出て、静かに呼吸をしてみた。

すぅー
はぁー

今度は荒々しく呼吸をしてみた。

スー
ハー

どくんっと心臓の震えを感じた。



東の空に朝の光が漏れている。
名前も知らない山々の稜線は、
滑らかで黄金色にきらめく、
ぼくの生命線。
太陽と山々と、魂のうずきを感じた。
ぼくの命を狙う死神の赤い目は、
ぼくをじっと見つめていた。
怖かったけど、山から勇気を貰った。
だからぼくは、目を逸らすことができた。


名前も知らない山なのに
ぼくにとっての命の恩人。
消えてはならないぼくの友達。



……きっとそんなものなのだろう
ぼくはくしゃみしてみた




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