吾輩


「何処其処の誰其れが何何だそうだ」
聞きたくもないが、耳に入ってくる。
場所を移す。
「彼処で何何が安く売っているが質が悪い」
どうでも良い。


吾輩は欠伸した。
身を縮こませていると、小さな子供が寄ってきた。
吾輩は、愛嬌を安売りしておいた。
町内散歩は暇を潰すのにもってこい。

ぐるりと廻って帰宅すると、
報道番組を流しながら、主人がうたた寝している。
「年間十万頭の猫が殺処分されています。この現実は巷の人たちにはあまり知られていませんが、現に今も一日当たり二百七十四頭の猫が処分されています」
吾輩は再び欠伸した。

腹が空いたので、台所へ行き、晩飯の支度をしている奥さんに媚びる。
刺身を一切れ頂戴する。
縁側で刺身に齧り付き、咀嚼し、呑み込む。
吾輩は半分残した刺身を地面に埋めた。







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