喧騒から静寂へと変わる頃






喧騒から静寂へと変わる頃、
ぼくは本を置き、窓から外を眺めた。
二色の水彩絵具のように混ざり合う、
夜の闇と落日の残照。
落日は闇へとバトンをつないだ。


 熟成途中の林檎の果実は、
 黄金の世界に赤が浸透し始める。
 そこから三つをもぎ取った、宵の金星。


 太陽に恋する月は、決して彼に追いつかない。
 哀しみに暮れた、闇に好かれる月は、
 腹いせに
 その身を半分に削り、
 闇夜の道しるべとなる月光を、半減させようとした。


 慈愛に溢れる、宵の金星は、
 足を速める林檎を持って
 鈍足を恨む月に、
 まさに今、渡そうとしている。


残照は消え失せ、休息の闇が世界を呑み込んだ。
鏡に変じた窓から、時計へと視線を滑らす。
あと二時間だ。
あと二時間で、ぼくは、月になる。







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